日本語と漢字の歴史についてのおもしろ話

日本語と漢字の歴史について調べるのが趣味みたいになっているのですが、その中で個人的に面白かった話をいくつか紹介します。だいたいソースはWikipediaだったりしますが…。

専門家ではないので、不正確な記述や誤った記述があるかもしれません。

五十音の順番はサンスクリット語由来

五十音の「あいうえお」「あかさたなはまやらわ」という順番はサンスクリット語から来ているという説が有力らしいです。

サンスクリット語の母音は順に:

a, ā, i, ī, u, ū, ṛ, ṝ, ḷ, ḹ, e, ai, o, au, (a)ṃ, (a)ḥ

ここから日本語に存在するものだけを抜き出すと順にa, i, u, e, oになります。子音の配列も

(母音), k, kh, g, gh, ṅ, c, ch, j, jh, ñ, ṭ, ṭh, ḍ, ḍh, ṇ, t, th, d, dh, n, p, ph, b, bh, m, y, r, l, v, ś, ṣ, s, h

となっていて同様です (ハ行がpに対応する点に注意。後述)。

サンスクリット語の音韻を勉強した学者が五十音を発明したからだそうです。

ちなみに子音の順番は調音位置 (発音のために舌、上あごなどが接触する点) の順番ともほぼ一致します (アカ (喉) → サタナ (舌) → ハマ (唇))。意外と科学的ですね。

出典: 五十音#起源 - Wikipedia

ハ行はもともとファ行の音だった。根拠の1つは室町時代のなぞなぞ

日本語の「はひふへほ」は昔はファ、フィ、フ、フェ、フォの音で発音していたそうです (さらに昔はパ、ピ、プ、ペ、ポだったようです)。

この根拠の1つが室町時代の

ははには二たびあいたれども ちちには一度もあわず

というなぞなぞ。答えは「唇」。現代人には意味不明ですが、「はは」が唇が二回合う音[ファファ]だったと考えれば筋が通ります ([チチ]は一度も合わない)。

ちなみに無声音・有声音で対になる発音は[p]と[b]なので、その点でもバ行が[b]ならハ行は[p]の方がしっくり来ますね。

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ひらがなには現在使われている形以外のものが存在した

今でこそ、一つの音に一つのひらがなが対応しているのは当たり前ですよね。でも、明治時代以前はこれがちゃんと統一されておらず、同じ音を表すひらがなが複数存在したようです。このうち、今では使われなくなったものを変体仮名と呼びます。この変体仮名、今でもたまーに使われています。これは見たことがあるはず:

Soba restaurant by nyaa birdies perch in Gunma

変体仮名で「生そば」と書かれています。

ちなみにこの変体仮名、2017年にUnicodeに収録されたらしいのですが、それを提案したのはオランダ人だそうです。なぜ…。

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日本で作られた漢語は結構多い

漢語 (漢字の音読みの単語) というと、中国で生まれた単語というイメージですよね。ところが:

文化、文明、民族、思想、法律、経済、資本、階級、警察、分配、宗教、哲学、理性、感性、意識、主観、客観、科学、物理、化学、分子、原子、質量、固体、時間、空間、理論、文学、電話、美術、喜劇、悲劇、社会主義、共産主義

これらはすべて、日本製の漢語 (和製漢語) だそうです。幕末から明治にかけて、西洋の近代的な概念を翻訳するために日本人が作った単語なんですね。和製漢語の多くは中国や韓国にも逆輸入されました。

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音読みが複数あるのは違う時代に違う地方から複数回漢字の音を輸入したから

中国語では多くの場合、1つの漢字には1つの読みしかありません。日本語の音読みは中国の読みを輸入したもののはずなのに、1つの漢字に音読みが複数あることが多いです (銀行[ギンコウ]、修行[シュギョウ]、行灯[アンドン]など)。これはなぜかというと、日本が中国から漢字の読みを、違う時代に違う地方から複数回輸入したからだそうです。これらを区別して呉音、漢音、唐音と呼びます。時代の違いや方言の差異で、同じ中国語でも読みが変わってしまったんですね。

 
呉音 カク ナン ギョウ キョウ ミョウ リキ シャク ナン ニョ
漢音 ガイ キャク ダン コウ ケイ メイ リョク セキ ダン ジョ

これは呉音と漢音の一例です。眺めてみると、なんとなく漢音は現代的な感じ、呉音はちょっと古臭い、または仏教的な感じがしませんか? (※個人差があります)

たしかに漢音のほうが新しいのですが、新しいと言っても奈良・平安時代のことです。ただ、江戸時代までは呉音が優勢で、漢音はあまり一般には普及しなかったようです。明治時代に作られた和製漢語 (前述) に採用されたことで、漢音は初めて広く普及することになりました。漢音の現代的なイメージはここから来ているのかもしれませんね。

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馬[うま]、梅[うめ]は実は音読み?

一般に訓読みに分類される馬[うま]、梅[うめ]ですが、実は中国語由来の読み、つまり厳密に言えば音読みだそうです。そういえば音読み[マ]、[バイ]とちょっと似てますね。古代の日本には馬や梅がなかったのでしょうか。

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三位[サンミ]、陰陽[オンミョウ]は-mで終わる音読みの痕跡

昔の中国語には散[sɑn]と三[sɑm]のように-nで終わる音と-mで終わる音の区別がありました。広東語や韓国語には現在でもこの区別が残ってますね。現代の日本語ではこの区別は失われ、どちらも[サン]と発音します。ただ、室町時代ぐらいまでは日本語でもこの-nと-mを区別していたらしいです。「三位一体」の「三位」を[サンイ]や[サンニ]ではなく[サンミ]と発音するのはこの名残らしいです ([sam-wi]→[sammi])。「陰陽」[オンミョウ]も同じです。

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中国語の[h]の音が音読みでは[k]になる

中国語での漢字の発音が[h]で始まるものの多くは、日本語の音読みでは[k]になっています。

例:

  • 華: [huá] (中)、 [ka] (日)
  • 漢: [hàn] (中)、 [kan] (日)

ちなみに韓国語でもこれらは[h]です。この理由ですが、 (これは単なる想像でちゃんと調べてないのですが) 前述の通り日本語のハ行は昔はパ行の音でした。逆に昔の日本語には[h]の音が無かったことになります。なので仕方なく、当時の日本語の中で[h]に一番近かった[k]で受け入れたのではないでしょうか。まあ[h]が[k]に近いかって言われるとよくわかりませんが…。

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大和言葉はラ行で始まらない

大和言葉 (漢語や外来語ではない、日本語固有の言葉) にはラ行で始まる単語がありません。ラ行で始まる単語を思い浮かべてみると、それは必ず漢語 (音読みの言葉) か外来語のはずです (「来年」「理由」「ルビー」など)。これは韓国語やモンゴル語などとも共通する特徴です。

日本語、韓国語と、モンゴル語を始めとするアルタイ諸語は、他にも語順など、共通点が多いのですが、歴史的に関係があるのかはよくわかっていないようです。

ちなみに硫黄 (素直に読むなら[リュウオウ]) を [イオウ] (古くは[ユワウ]) と読むのも、当時の日本人がラ行で始まるのを嫌ったことの名残らしいです。

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大和言葉では本来、母音は連続して現れない

本来の大和言葉では、一つの単語に母音が連続して現れること ([ai], [ou], [oo]など) はなかったようです。現代では母音が連続しているものもありますが、これは:

  • 旧仮名遣いでは母音が連続していないもの (「こおり」←「こほり」[kopori]、「あお」←「あを」[awo]など)
  • 後世に発音が訛ったもの(「かあさん」←「かかさま」など)

などです。

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日本語には昔、母音が8つあった?

日本語の母音は現在5つ (アイウエオ) ですが、奈良時代には8つあったと考えられているそうです。

この根拠は、上代特殊仮名遣と呼ばれる万葉仮名の使い分け。万葉仮名は現在の仮名とは違って、1つの音に対応する字がいくつもあり、どの字を使うのかは文献や単語によってバラバラでした。ただ、完全にバラバラかというとそうでもなく、例えば「キ」という音に対する万葉仮名のうち支・吉・岐・来・棄などを甲類、己・紀・記・忌・氣などを乙類とすると、「秋」「君」「時」「聞く」の単語の「キ」は甲類の字、「霧」「岸」「月」「木」の「キ」は乙類の字を使う、というルールがあることがわかりました。これは当時「キ」の発音が2種類あったからではないか、というわけです。同様の現象が他のイ・エ・オ段の文字にも見られたので、当時の日本語の母音は

ア、イ甲類、イ乙類、ウ、エ甲類、エ乙類、オ甲類、オ乙類

の8つあったとされています。ただ、本当に8つだったのか、どういう音だったのか、については諸説あるようです。

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日本語の起源はタミル語?

日本語の起源は言語学者にもよくわかっていないのですが、インドのタミル語が起源なんていう説もあります。あまり支持されてはいないようですが…。

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高句麗語の数字の読みは日本語と似てる?

古代朝鮮半島の国家、高句麗。そこで話されていた言語は資料が少なく、よくわかっていないのですが、数字の読み方がちょっとだけ分かっています:

三[ミツ] 五[ウィツ] 七[ナノン] 十[トク]

ちょっと日本語と似てますね:

三[み] 五[いつ] 七[なな] 十[とお]

ちなみに現代韓国語とは全然似ていません:

三[セッ] 五[タソッ] 七[イルゴプ] 十[ヨル]

高句麗語は他にも日本語に似た語彙があり、日本語の起源か?とも言われていますが、タミル語同様、はっきりとはわかっていないようです。

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